今回紹介するのは、平成10年式のダイハツ ムーブ[E-L600S](走行距離89,841km)で起きたイグニッションキーの不具合の状況と、その修理についてです。
症状:イグニッションキーが抜けない。
この『イグニッションキーが抜けない』という症状が出たムーブですが…、
先に結果を云うと、シフトロック機構に関連するケーブルの破損が原因でした。
通常、シフトがP(パーキング)の位置にないとイグニッションキーがLOOKの位置まで回らず、キーが抜けない機構になっています。今回のお車のシフトロック機構は機械式で、シフトからキーシリンダー付近までケーブルが通っているタイプでした。
シフトがP(パーキング)にあるにもかかわらずキーが抜けなかった原因は、ケーブルの一部(運転席の足元左側付近のケーブル取り付け部)が破損してケーブルが引っ張られて位置がずれ、キーシリンダー側でP(パーキング)位置での正常な作動をしなかったため、キーが抜けない状況となっていました。
図面と実物のキーシリンダー
このケーブルの修理にたどり着くまでに、非常に悩まされました。
お車の預かりから修理までの流れですが、お客様から朝一番に、「昨夜からイグニッションキーが抜けなくて困っている。」と、お電話を頂きました。
イグニッションキーがどうしても抜けなかったので、昨夜はスペアキーを使ってドアを施錠したとのこと。
お客様は、「車も古いからしょうがないのでしょうか」と諦めの気配がありましたが、話を聞いた時点でキーの磨耗やキーシリンダーの不具合が原因ではないかと当たりを付けていたので、修理可能ですので安心してくださいと伝え、お車を預かる事になりました。
さっそく作業に取り掛かり、キーを回したり、抜き加減を調整したりしているうちに、スッと抜けました。
抜けたキーを確認すると、磨耗が酷くメッキも剥がれ、角も取れていました。
シリンダー内部に異物や汚れが無いか確認し、キーの汚れを拭き、再度挿すとまたしても抜けなくなりました。
何度か試してみましたが、なんとか抜いても挿すとまた抜けなくなる、という事が続き、その抜け加減等の状況からキーシリンダーの不具合と判断し、お客様へ確認をとった後に発注しました。
キーシリンダーは二日後に届き、さっそく取り替えてみたものの全く改善していません。
そこからさらに故障探求をし、上記の原因にたどり着きました。
ケーブルの破損部分については、修理が効きそうだったので、交換せずに作業を進める事に。
ケーブル取り付け部が破損して固定できていない事が原因なため、その部分を固定するため、「ボンド・エイド P1500」を使用して修理をしました。
「ボンド・エイド P1500」はセメントタイプの急速硬化接着剤で、固まるとボルト用のネジ山を切れるくらいに非常に硬くなります。
修理箇所で、確実にケーブルが固定できている事と共に、キー操作・抜き挿しもスムーズに問題なく行える事を確認し、修理完了としました。
お客様には、今回の故障の原因としてキーシリンダーでは無く、上記にあるようなケーブルの一部破損が原因である事を説明すると同時に、キーとキーシリンダーについても、「今後、キーやキーシリンダーの磨耗により同じような症状が起きるのは不安なので」というお客様のご理解と納得の元、キーシリンダーもAssy交換させていただきました。
今回の事例では、教訓として学ぶ事が多くありました。
当たりを付けた原因を追究しないまま作業に入るのは、今回のようなケースに繋がるという自分に戒める経験になりましたし、作業に当たる前提として「固定観念を持たずに作業を進める事が大事」だと感じました。
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